靴の盗難

一月二十二日(日)晴
私はやくざに囚われの身となっているが、そこの家の赤ん坊が私になつくので一目置かれている。その赤ん坊は機嫌が悪いと箱になってしまうので皆が手を焼いていたのだが、私があやすと機嫌がいいのである。ただ、私はこの子が本当は人間の赤ちゃんではなく何か珍しい小動物であることを知っている。

出張から帰国する日、前日から家内とは別行動の私は荷物をまとめるのに時間がかかりホテルを出ようとすると、玄関に預けたはずの私の靴がない。困って、そこにある誰かの靴を履いて行こうと思うが、小さすぎたり、先が細すぎてとても履けそうになかったり、デザインがださかったりで迷っているうち人に見られている気がして断念する。新興宗教のような団体が乗ったバスに紛れ込んで連れて行かれた先は公会堂のようなところで、皆がいっせいに履物を脱いで中に入るのでその後に探しに行くが、女性ものや草履が多くて見つからない。やがて、女性の教祖らしき人が新年会の挨拶を始めたので公会堂を離れ、近くに会社の寮があったのを思い出して行ってみる。案の定勤務時間帯なので人はいず、ゆっくり探すとサイズもスタイルも自分にぴったりなのが見つかり、私は座って紐を結び始める。そこにひょっこり人事部長がやって来た。夜の便で帰る場合、通常昼間は働いてから乗るのに自分は朝から出ているのでまずいと思ったが顔には出さず、人事部長にそうして毎日会社の施設を巡回しているのかと聞く。「施設」という言葉が自分でもうまく発音できず、向こうもわかりかねていたので何度も言い直す。そう言えば家内とまったく連絡をとっていないことを思い出して携帯を取り出すと、メールが入っていたので読もうとすると、そこに自分の知らない寮生が帰ってきた。そして、私の足元をちらちら見ている。私も気づいて「これ君の?」と聞くと、「はい」との答え。私は事情を話し、借りて帰って日本に戻ったら返却しようと思っていたと説明する。私は会社の○×というもので、決して怪しい者ではないよと言う。それから、その靴が軽くて履きやすく通気性もいいというような話を寮生としていると、もうひとり、こちらはお互いに顔見知りの寮生がやって来て、「○×さんらしいですね」と言うので「だいぶ自分中心だけどね。ごめんね」と謝る。