空白地帯

  香道志野流松隠軒では今年も聞香始め(茶道の初釜に相当)をやったという。わたしの通う教室では「お初香」と呼ぶ香席を緊急事態宣言下でやむなく中止にするとの報せを受けたすぐ後だったのでちょっと驚いた。人数は通常より少なくして間隔も開けたというが、風通しの良いところでは出来ないものであるし、同じ香炉を手で回すものであるし、何よりそれなりの時間5人以上が同一空間に居ることになる。しかも、マスクをしていては聞けないから外すわけである。誰かが陽性になれば濃厚接触者になる可能性が高い状況である。濃茶の茶席と並んでコロナ禍のもと最も開催が難しいのが香席だと思っていたのだが、それを敢えてやるとは大したものである。もっとも、考えてみれば名古屋だからこそ出来たことかも知れない。実際緊急事態宣言の対象ではないし、大阪を中心とした関西の府県のように発令の要請に動く様子もないようだから、非難されることもないと思って敢行したものか。言ってみれば、名古屋という一種の空白地帯に拠点を置く志野流ならではの決断であろう。ただし、東京や大阪での聞香始めは中止したという。また、京都の三千家の初釜は中止だという。当然であろう。