ローマ世界の終焉

 自分の天邪鬼ぶりに驚くしかないが、塩野七生の『ローマ人の歴史』を最終巻であるXV巻「ローマ世界の終焉」から読み始めた。そうしようと決めて始めたことではないのだが、結果としてそうなった。きっかけは、『ヒュパティア』(エドワード・J ・ワッツ著、白水社)を読んで、後期ローマ帝国のことを知りたくなったのである。ヒュパティアのことも、映画『アレキサンドリア』を観て初めて知った。五世紀初頭にアレキサンドリアキリスト教徒に虐殺された女性哲学者である。実際、キリスト教が国教化されて以降のローマ帝国の歴史にほとんど興味を以て来なかったせいもあるが、自分が何も知らないことに気づかされたのである。

 それで、まず五・六世紀のローマ帝国の状況を知ろうとアマゾンで探していたら、『ローマ人の物語』にその時代のことを書いたものがあることを知り、さっそく注文した。あくまで五・六世紀の状況や、キリスト教の国教化やユリアヌス帝あたりのことを知りたくて、14巻と15巻を注文したとこころ、たまたま15巻が先に届いて読み始めたに過ぎない。全部を読むつもりはなかったのである。

 ところが、読み始めると名著として知られるだけあって確かに面白い。背景やさまざまな出来事の進行の叙述がちょうどいいのである。詳し過ぎず、駆け足でもなく、適度に著者の考察や感慨も入って、それが悉く納得できるものだから読んでいて心地いい。地図や図表、写真も煩わしくなくちょうどよく収められていて、さすがにベストセラーとなるだけのことはある。それで、この機会に15巻目から逆に進んで読む気になったのである。

 この巻では西ローマ帝国の滅亡までとその後の一世紀くらいを扱っている。まさに滅亡から遡ってローマ帝国の歴史を読むことになるのだが、これはこれでもしかすると面白いかも知れないと思えてきた。結局15巻をほぼ一日で読み終え、今は14巻の到着を待っている。

 何故アレクサンドリアなのか、何故ローマ帝国キリスト教国教化に興味を持つのかについては、この先少しずつここ数か月の読書の遍歴を辿りつつ書いていくことにしたい。