版本寫本

六月二十五日(水)晴後陰時々雨
余の誕辰也。航空會社二社と銀行から祝のメール届く。
此処數日香道関係の調べ物のため版本や寫本の類を讀んでゐる。群書類従に収められた名香録や『五月雨日記』等である。香銘と其の典拠となる和歌の関係、更に其の香木の香り立ちとの関係は實に興味深い。室町期の洗練された美意識と言葉のセンスは日本史の中でも幾度しかない文化の極限を示すものであらう。おしなべて「道」になつてからは形骸化して腐り始める。現代に於いて「道」に未だならざる前の、美意識の極致が何かあるのであらうか。洗練を競ひ合ふ前提として、共通した美意識と感覚を共有する人たちの「場」が必要なのではないかと思ひ始めてゐる。