成金趣味

七月十六日(水)晴
最近成金に興味を持ち、あれこれ調べてゐる。広瀬隆の『持丸長者』を買ひ、昨日は古本屋で荒俣宏の『黄金伝説』を手に入れた。先日届いた紀田順一郎の『カネが邪魔でしようがない』も明治大正成金列伝の副題を持つものであるし、大正期の見聞記や随筆には成金の話題は事欠かない。中でも一番興味があるのが船成金たちで、中村研究所を設立した中村精七郎はその端くれだが、所謂三大船成金に數へられてはゐない。その中村にして中村研究所につぎ込んだ予算が大正六年当時の金で三百萬圓といふ。同じ年慶応義塾が醫科大學設立に向けて集めた額が百六十五萬圓であることから推しても相當な金額であることが分かる。
ちなみに中村精七郎が興した山九といふ物流の會社があつて、其処に中村研究所に關して問ひ合はせた事がある。しかしながら、殘念なことに極めて不親切な對應であつた。創業者の事跡を大切にしない會社は早晩滅びるであらうと豫言してをく。