江戸・三絃・粋の道

観潮梅川

十二月八日(土)晴 十時より一如庵にて尺八稽古。流し鈴慕、一閑流六段を一尺八寸で吹く。早稲田驛より地下鐡を乘り繼ぎ東大前に至る。改札にて家人と落合ひ農學部の脇青年の道を辿り千駄木に進み、漱石旧居跡を見て後観潮楼に到るも未だ晝食をとらざれば団子…

晩秋好日 

十二月五日(水)快晴 大船から座つて京濱東北線にて上野まで、其処で山手線に乘り換へ巣鴨に至る。十時の約に十分早く着くも既に兩先生及びS田先輩の姿あり。四人にて徒歩染井霊園向かふ。冬晴れの陽光降り注ぎ遮るもの無き日向の多き墓地は思ひの他暖かし。…

掃苔と演奏会 

十一月三日(土)晴 九時半前家人と家を出で電車を乘り繼ぎ白金高輪驛に至る。余の生まれたる時兩親が住みゐたりし麻布新堀町や母方の實家のあつた白金志田町からは最寄りの驛なるも開通は比較的最近の事なれば、余は初めて此の驛に降り立つ。櫻田通りを上り…

書と小唄 

十月二十九日(月)晴 雨の後にて空澄み切つて青く清清しき朝なり。通勤時大船まで三十分歩く。定時退社、歸宅後直ぐに夕餉を摂り、家人と車で出掛け鎌倉の原山先生宅に向ふ。家人の書道の先生である。最初小唄についての話を伺ふ。先生は亡き御母堂が小唄を…

夏目坂根岸谷中

十月二十七日(土)陰 八時家を出で一如庵に向かひ十時より稽古。大和樂、布袋軒鈴慕、布袋軒三谷、流し鈴慕曙調子を二回。そして一閑流六段を二度吹く。學生時分に買つた一尺八寸が今になつて割によく鳴り出した。最近は家でも八寸をよく吹き、外曲も練習して…

蒲田澁谷 

十月二十四日(水)晴 營業報告会なるものがあり、其れを聞きに蒲田の某ビルに朝から赴く。午後五時終はり、東急線を乘り繼き澁谷に至る。古書センターにて近藤啓次郎『大観傳』、野口米次郎『光悦と抱一』を購ふ。七時より大和田傳承ホールにて本條秀慈郎三…

骨董と端唄 

十月二十一日(日)晴 宿醉殘り睡氣甚しき中何とか起床。入浴の後着物に着替へ九時半過ぎ家人と家を出づ。電車にて有樂町に至り、大江戸骨董市を覗く。家人は扇子形の文鎮、余は舟形の水滴と印傅の名刺入れを購ふ。又、三味線の撥の形をした小さなストラツプ…

根津谷中千駄ヶ谷

十月十四日(日)陰時々小雨 連日着物姿にて今日は家人と倶に家を出づ。電車を乘り繼ぎ根津に至る。徒歩根津神社に足を運ぶ。余は初めて詣づるも徳川将軍家より献納されし境内は広く楼門本殿透塀等の立派なる事に驚く。 根津神社 境内のベンチにて持参の握飯…

竹と絲 

十月十三日(土)晴 紬の着物に先日谷中で買つた帯を締め八時過ぎ一人で家を出づ。十時より一如庵の、久しぶりに一階の座敷で稽古。大和樂、布袋軒鈴慕、布袋軒三谷に流し鈴慕の曙調子を二度吹いた後初めて一閑流六段を吹く。雑談の後十一時半辞して地下鐡に…