2013-01-01から1年間の記事一覧

明清と茶器

十月十二日(土)晴 十一時より一如庵にて尺八稽古。辞して會津八一記念博物館に赴き、明清の書畫を観る。李鴻章、徐世昌の他犬養木堂の書もあり。一朝菴にて蕎麦を食したる後歸途に就き、歸宅後家人と倶にその煎茶道を習ふところの先生宅に車で往き、東阿部流…

カタカナガキキラヒダ

十月十一日(金)晴 映畫のタイトルやバンドの名前、其れから廣告のコピー等で、外來語を表記するのではなく普通の日本語文を片仮名で書くものをたまに見かける。余はあれが堪らなく嫌ひである。アカルイミライだのツナガルチカラだのといふ文字列を見ると吐き…

終電

十月十日(木)陰 御徒町のような街の路地を曲がった雑居ビルの地下へと家人の導きで降りて行くと、そこは思いがけず劇場になっていて、東京ガールズコレクションを思いっきり安っぽくしたようなファッションショーをやっている。席にはその座席の値段が書かれ…

遅刻夢−或いは夢中

十月九日(水)晴 学校に行く支度をしている。家はマンションの一階だが、高台にあるのか眼下に里芋畑の葉が広がっている。家には家人と義妹と、小学校の時の同級生千葉がいる。どう考えても間に合わない時間になっている。急いでいるのにこんな時に限ってベル…

胸騒ぎのする読書

十月七日(月)陰後晴、蒸し暑し 『意身伝心』読了。久しぶりに読みながらずっと胸騒ぎを抑えられなかった。これが始まると目が泳ぎ、字面を追ってはいても読めていないこともしばしば。それでもこの上なく楽しく、刺激的で、よく分からないところもたくさんあ…

棚と茶杓

十月六日(日)陰後晴 午前中急に思い立って車で家人と久しぶりに遊行寺骨董市に行く。出店がこの前の鶴岡八幡宮の骨董市よりも少なかった。大江戸も開催の日なのでそちらに流れたか。家人が気に入った茶杓、供筒と箱の二重で銘「秋の聲」と「野あそび」を買う…

十月の予定

十月五日(土)雨時々陰 終日家に在り、よくものを書いた。朝半紙に向かって習字の後原稿を一本仕上げ通信も終わり、ゲラのチェックも済ました。嶺庵の掛軸を象山の書に換え、ついでに飾り棚の模様替えもした。充実した一日であった。これでとりあえず締切りの…

全体と部分

十月四日(金)陰 先日会社で全世界での売上を管理する部門の本部長が研究所に来て話をされた。要するに売上と利益をもっと出せるような社内体制を整備するという話なのだが、その中で「部分最適」と「全体最適」というふたつの言葉をあたかも対の概念であるか…

明治の化學者

十月三日(木)晴 廣田鋼藏著『明治の化學者』讀了。明治の化學界における派閥抗争を掘り起こした勞作。朔日に書いた舎密派即ち實學重視の長井長義一派と理學派櫻井錠二派の、其れまでの「化學史」では触れられる事のなかつた、單なる化學會會長のポストを巡る…

明治の日本人

十月朔日(火)雨後晴 杉山茂丸『俗戰國策』讀了。書かれた事が嘘か眞か全く判斷のしやうもないが、策士茂丸大活劇の趣もあつて讀み物としては面白い。伊藤博文も山県有朋も、桂太郎も大隈重信も、茂丸の手に掛かると極めて人間くさい存在となり、子どもの意地…

惜別

九月二十八日(土)晴 ついに、あまちゃんが終わった。あっけなく、思い出も適度に詰まって、明日への希望に明るい笑顔で見終えた最終回であった。今はまだ、喪失感への予感だけが胸の中に渦巻いている。2013年の夏はあきちゃんと過ごした。あきちゃんは、すべ…

眞名仮名

九月二十六日(木)陰時々晴、風強し 夏の途中から朝早くに起きられなくなり、書の稽古は歸宅後にしてゐる。少し前まで関戸本古今集を手本に仮名を練習してゐたのだが、一向に上達せず面白くもないので、一昨日から又漢字に戻して今は米芾を再開。仮名は優美で…

書庫

九月二十五日(水)雨時々陰 先日家内の実家に行った際相談して、家人と義妹のかよちゃんが子どもの頃使っていた、今は物置のようになっている部屋を、余の蔵書の一部を収める書庫として貸して貰えることになった。図々しいにも程があるというものだが、素直に…

巴里の孤獨

九月二十三日(月)陰 黄金町ジャック&ベティで映畫『クロワッサンで朝食を』を観る。ジャンヌ・モロー演ずるパリの高級住宅街に住む狷介孤高な老婆と、その故国エストニアから出て來た家政婦のやりとりを通じて描く、孤獨と、だからこそ通ふ心の動き。實に胸…

双眼鏡

九月二十二日(日)晴 三時まで執筆。その後図書館に寄った後町田に行き茶の湯稽古。夕飯を倶にして帰る。この日義妹より双眼鏡を貰う。良人の勤めるオリンパス製のものにて、特に用途も思い浮かばず貰って来るが、書斎に置いて思わぬ利点を発見する。天井まで…

栖鳳と巴水

九月二十一日(土)晴 十一時より一如庵にて尺八稽古。大和樂、布袋軒三谷、布袋軒鈴慕、越後三谷、松巌軒鈴慕を吹く。辞して竹橋に至り、家人と待ち合せて昼食の後近代美術館で竹内栖鳳展を観る。時期ごとに変化と発展を跡づける展示にて見応えあり。知ってい…

録画

九月二十日(金)晴 歸宅後尺八練習と書道。其の後麥酒を飲みながら録画したあまちやんと其の後のあさイチといふ番組を見る。能年玲奈ちやんがゲストで出演、その魅力を余すところなく見せてくれ世のおじさんたちはでれでれとなつたことであらう。この録画は永…

月見

九月十九日(木)晴 歸宅後浴衣に着替へ仲秋の満月なれば屋上に出で月を愛でながら此の秋初めての熱燗を呑む。冷えた夜空に月高く酒は旨し。丁度八時過ぎの全き望月を見つつ、此処數年の境遇の変轉に思ひを馳す。

天晴

九月十七日(火)快晴 台風一過、雲ひとつなく、見事な晴空であった。空気は澄んでしかも湿気も飛ばされたのか、日差しは強いがすがすがしい朝である。いきなり人身事故によって駅で足止めを喰らうというアクシデントはあったが、それでも機嫌が悪くならないの…

巴水と中村研究所

九月十五日(日)雨後陰 電車で蒲田に行き、片柳学園「ギャラリー鴻」にて『川瀬巴水−東京の風景』展を観る。八十点以上の展示で無料。巴水の描いた東京の景色を堪能。自動車や自転車、洋服の少女が描かれているのに、江戸の余韻が漂っている。雪の景色がこれ…

帽子

九月十四日(土)陰時々晴 家人と一緒に友人のT教授の家に行こうとしている。T氏の家はリゾートホテルの一室ということで、家人と私は手分けして探すことにする。地下に降りていくと、何度か夢の中で行ったことのある温泉の大浴場があり、こちらではないとす…

松亭と是眞

九月十一日(水)陰 日本美術史を専攻した訳ではないから当然とは言え、世の中には自分が知らずにいただけで、実は凄い芸術家がたくさんいるものだと最近つくづく思う。特に、若い頃は西洋美術に憧れ、日本の絵画は雪舟や等伯を除くとほとんど興味がなかったこ…

仰天すべき虚言

九月九日(月)晴 嘘をつくにも程がある。福島原発の汚染水や放射線漏れをどこの誰が「コントロール」していると言うのであろう。一国の首相がこれほど明確に嘘をつき、それを信じたのかオリンピックの東京開催が決まり、利権に群がる醜い日本人がまたぞろ暗躍…

日々

九月八日(日) 終日執筆。においとことばについての思索を続ける。分かっていることや考えていることはあるのだが、それを一般の人に分かるように書くことが予想以上に難しい。夕方図書館に行って本を借り、返す資料の一部をコピーする。中村研究所や丸見屋化…

急降下

九月五日(木)雨後晴 震災が起こって以来「あまちゃん」が、以前とくらべて面白くない。話は展開しているもののどこか雑な感じで、過程が今までのように丁寧に描かれていない気がする。映画のオーディションも撮影まで終り、緊張感が解けたせいか、或いは太巻…

五輪

九月四日(水)雨 内田先生に先に書かれてしまったが、五輪招致に私は疑問しか感じない。東京でやる意義や意味を見出せないのだ。64年の時は、確かにオリンピックを東京でやることに意義も意味もあったと思う。だからこそ招致に向けた人の動きに熱意と真摯さが…

巴水と周造

九月三日(火)晴 私は川瀬巴水が好きで、突然巴水の版画が見たくて仕方がなくなる時がある。先日思い切って東京美術から出たばかりの巴水作品集をほとんど衝動買いでアマゾンで註文して今日届いた。私としては高めの買い物で3150円である。そうしたら今日、た…

震災、そして中村研究所

九月二日(月)晴 今日、あまちゃんでは3.11の震災が起こった。昨日の9.1が月曜なら、関東大震災90周年と重なった訳で、インパクトという点では一日ずれて残念な気もする。というか、昨日は90年の記念と記憶をすべき節目だったというのに、世の中では大して関…

月末猛暑

八月三十一日(土)晴 いつも通り六時半に起き、習字をしてから入浴、朝食、あまちゃんと進み、八時半過ぎ家の近くからバスに乗って鶴岡八幡宮に赴く。参道で骨董市が開かれると聞いたので行ったのだが、規模は大江戸に比べると小さく、また安めのものが多い。…

ホラ丸

八月三十日(金)晴、暑し 今、訳あって杉山茂丸の『百魔續篇』の一部を国会図書館所蔵のデジタル画面からプリントアウトして読んでいる。『俗戦国策』に関しては復刻版を注文して今日落手。いやはやとにかく面白い。もしかすると息子の夢野久作のものより面白…