キリスト教の勝利、或いは不寛容な世界の出現

「ローマ人の物語」第14巻『キリストの勝利』読了。ユリアヌスとテオドシウスという、方やギリシアの哲人を理想としてキリスト教徒の横暴を防ぎたい皇帝と、一方は完全にキリスト教に取り込まれて伝統的な多神教を禁じるに至った皇帝が登場する時代である…。…

一神教への吐き気

きっかけは、香料について旧約聖書を調べたことに始まる。高校時代に岩波文庫の『創世記』を読んで以来、たまに文学や歴史書などに参照された『詩篇』や『雅歌』の一節を聖書協会訳で飛ばし読みすることはあっても、まともに読んだことはなかった。それが、…

ローマ世界の終焉

自分の天邪鬼ぶりに驚くしかないが、塩野七生の『ローマ人の歴史』を最終巻であるXV巻「ローマ世界の終焉」から読み始めた。そうしようと決めて始めたことではないのだが、結果としてそうなった。きっかけは、『ヒュパティア』(エドワード・J ・ワッツ著、…

野球人(タマジン)

プロ野球界OBのユーチューブが面白い。見始めると何時間も続けて見てしまうことがある。裏話的なものも技術論も、ともに面白くためになる、ってなんのためになるのか自分でもわからないが、とにかく楽しく見ている。何故か知らないが、中日系の人たちに面白…

ミュージックライフ

先日、新しいCDコンポ(もはやそういう言い方をしているかどうかさえ定かではないが)が届いた。JVCの一体型コンポである。早速CDをかけてみるとやはり音は良い。 その日たまたま車のステレオでロキシーミュージックがかかったので、もっと聴きたくなり、帰…

ソファと音楽

先日ソファがやっと到着した。ハンス・ウェグナーのデザインによる、GE240というモデルで、名作と言われている。世によく出回っているGE290より、もともと数が少ないうえに、チーク材のものはさらに希少と言われている。幸い、たまたま見に行った家具屋でネ…

十有余年

二度目の離婚をしてからもう十三年になる。2009年の2月にひさしぶりにひとりで暮らすようになって、仏道が身近になったこともあるが、坐禅からはじめて室町以降の日本文化の粋に触れたいという気になったこともあり、とにかく「和」のものを好むようになった…

音の力

深津絵里という女優がいる。魅力的な女性だと思うが、昔からわたしはどこか痛々しい感じがしていた。今朝、爪を切っていてその理由がわかった。「深爪」を思わせる音の響きだったのである。しかも、最後が「り」で、鋭利と同じく鋭い。わたしは爪が弱くてす…

断捨離

齢六十を過ぎたこともあり、身辺整理というほどでもないが、家の中のものを減らそうと思い立ち、昨年の末から多くのものを捨て始めた。粗大ごみを持ち込めるストックヤードに何度通ったことか。本棚もふたつ解体し、その分の本も処分した。画集なども一部は…

ダメ親父

私は見ていないのだが、朝の連続テレビ小説という番組に出てくるのは、たいていどうしようもないダメ親父ばかりなのだそうである。妻と一緒に店を始めようと言い出しても、結局手伝わず、たまに手を出せばひっくり返したりやけどをしたりで、「私がやるから…

転覆船

カッターのような船にひとりで乗っている。会社の連中は先を行く小型船に乗り込んでいたのだが、私だけ用事があって乗り遅れたのである。私の乗る船は私の意志で動くもののようで、先を行く船を追いかけている。海上は交通量が多く、二三度危うく衝突しそう…

日本初

「本日はタカネット鷹杉が新春に皆さまお届けする素敵な商品のご紹介です」 「今日は何でしょうワクワクしますね」 「ハイ。今回は、日本初、日本初、日本で初めて、テレビ通販で定価以上でのご提供となります」 「それは凄いですね」 「そうなんです。何と…

その後

衝撃はまだ続いている。今の自分の状態をうまく言い表わすことばはいまだ見つからないが、大雑把な概念や用語でわかったつもりになるよりは、この感情と理性に渦巻く混沌こそをきちんとからだ全体で受けとめるべきなのだろう。 無知と無関心に対する羞恥心と…

人生を変える一冊

石牟礼道子『神々の村』読了。「苦海浄土」第二部である。また、図書館で『桑原史成写真集 水俣事件』および『写真集「水俣を見た七人の写真家たち」』を借りて来た。正視せねばならぬという、自らに課した義務としてそれらの写真を凝視した。そして、第三部…

蘭の花

蘭の花が今年は咲いた。数年前笠間稲荷の境内で買い求めたもので、なかなか咲かず、今回が二度目である。気まぐれなところも我儘な貴婦人のようで嫌いではない。わたしは植物を育てるのが苦手で、盆栽も花もすぐに枯らしてしまうのだが、家内が適度に水をや…

化学工業という「悪」

恥ずかしながら告白する。懺悔と言ってもいい。初めて石牟礼道子著『苦海浄土』を読み終えたのである。高校の時、教師に勧められた。すぐに買って書棚に並べたもののそのまま読まずにいたのである。今回松岡正剛と田中優子の『日本問答』と『江戸問答』を続…

3つの婚約解消事件

先日、浅見雅男の『大正天皇婚約解消事件』を読み終えた。これで、『闘う皇族』と合わせ、明治後半から大正期にかけて起こった三つの婚約解消事件の詳細を知ったことになる。そのすべてに「伏見宮系」皇族が絡んでいる。簡単にまとめておこう。 まずは、他な…

残念

キネカ大森にて「私をくいとめて」を観た。のん(能年玲奈)は相変わらず可愛かったけれど、映画はいろいろな意味で残念な出来であった。同じ綿矢りさ原作大丸明子監督コンビでの「勝手にふるえてろ」が思いのほか面白かったので期待していただけに残念であ…

原敬  

松本健一著『原敬の大正』読了。原敬はずっと気になっていた。このところ読んでいた明治後期から大正にかけての歴史書において、原の名前は度々登場し、その際に紹介される原の判断や言動が、現在の目から見ても理に適っていたり、きわめてまともなものだっ…

美術二館

パナソニック汐留美術館にて「香りの器」展を観る。招待券を貰ったので赴いたものである。香水瓶、香道具など美しい展示がなされていた。その後新橋から銀座に出て、途中伊東屋で買い物をした後其の儘京橋、日本橋へと歩き、三越前から地下鉄で清澄白河へ。…

明治の闇―神社合祀と樟脳

[数日前、このブログで平田東助の名前を出したが、たぶんあまり知られていないと思うので、わたしが平田を嫌う理由となった「神社合祀問題」について以前書いたものをここに掲載することにしたい] 明治三九年八月、「神社合祀の勅令」というものが発布された…

困った血筋

『闘う皇族』読了。前回取り上げた宮中某重大事件の後は、「朝融王事件」を追い、その両事件の大元である朝彦親王を振り返る内容である。朝融王事件というのは、宮中某重大事件の当事者で、何とか娘を皇太子裕仁の正室に据えることに成功した久邇宮邦彦王が…

書評の良し悪し

今朝雨の中新聞を買いに出ると朝日が売り切れていたので読売を買った。昨日は朝日を買って、朝日の土曜版には書評が載っているので読んだばかりだが、読売の書評は日曜なので二日続けて書評欄を読むことになった。昨日は中公新書『板垣退助』や兵藤裕己の『…

詩人の本棚

空港に着いてからパスポートと航空券を忘れてきたことに気づくのはいつものこととは言え、その狼狽ぶりはいつになっても慣れるものではなく、タブレットで予約したシートの確認とクレジットカードの支払い明細を確認するうちにニューヨークに着いた。それか…

嫌な連中

浅見雅男の『闘う皇族 ある宮家の三代』を読んでいる。駄場の本で「天皇家vs伏見宮家」の構図を知り、先の浅見の本で「伏見宮系の皇族」についての知識を得た上で、こんどはその伏見宮系の中で最も問題の多い久邇宮家を主題に据えた本書に行きついたというわ…

日々の暮らし

歳をとったせいもあるが、在宅勤務とマスクの常用によって着るものに金を使う気がすっかり失せた。恰好つける必要もないし、家にいるから楽な格好でいるのが一番である。これでは女性の化粧品が売れなくなるわけである。外食もせず飲みにも行かないから小遣…

もうひとつの天皇家

浅見雅男の『もうひとつの天皇家 伏見宮』読了。『天皇と右翼・左翼』で度々言及のあった伏見宮系皇族について詳しく知りたくなって読んだものである。初期の伏見宮のことは、横井清の『室町時代の一皇族の生涯』を読んでいたので、「看聞日記」著者である貞…

空白地帯

香道志野流松隠軒では今年も聞香始め(茶道の初釜に相当)をやったという。わたしの通う教室では「お初香」と呼ぶ香席を緊急事態宣言下でやむなく中止にするとの報せを受けたすぐ後だったのでちょっと驚いた。人数は通常より少なくして間隔も開けたというが…

天皇家対伏見宮家

駄場裕司『天皇と右翼・左翼』を昨日読み終えた。かなり面白い本である。近代日本の隠された対立構図を天皇家vs.伏見宮家皇族の対立を軸として読み解くもので、多少穿ち過ぎの嫌いはあるが、それでも「そう考えた方が確かに分かりやすい」と納得してしまうこ…

寛容について

TASCマンスリーという雑誌に、国際基督教大学の森本あんりという人(教授)が寛容さに関する記事を寄せていたのを読んだ。その中で同性愛者は地獄に落ちると書いたラグビー選手がオーストラリア代表から外されたことについて、こうした措置をとったそのラグ…